「退職した年って、確定申告は必要?」「フリーランス初年度の確定申告ってどうすればいいの?」
そんな疑問や不安を抱えている薬剤師の方へ。
退職金・失業給付・アルバイト収入・開業後の事業所得——
複数の収入形態が絡む退職後の独立初年度は、確定申告の内容が通常より複雑になりがちです。
特に、
- 「退職金は申告が必要?」
- 「アルバイトと事業の収入はどう区別する?」
- 「青色申告を使うと何が変わる?」
といった点は、正しく理解していないと税金を払いすぎたり、控除を逃したりするリスクにもつながります。
この記事では、退職後にフリーランスとして独立した薬剤師が、初年度に確定申告が必要になる理由・申告対象になる所得の種類・必要な書類と流れをわかりやすく解説します。
これから確定申告に臨むあなたが、安心して手続きを進められるよう、図解とともにポイントを整理しました。
ぜひ最後までご覧いただき、申告準備の不安を一つずつ解消してください。
確定申告が必要になる主なケース

会社を退職した後は、「年末調整が未実施の給与」や「退職金」「アルバイト収入」「開業後の売上」など、複数の収入が混在することが多くなります。これらのうち、一定の条件に該当する場合には、自分で確定申告を行う必要があります。
確定申告が必要になるのは、以下のようなケースです。ご自身に当てはまるか確認してみましょう。
- 退職までの給与に年末調整が行われていない場合
→ 年の途中で退職し年末調整を受けていない場合、所得税が過剰に徴収されている可能性があります。確定申告によって税金が戻るケースもあるため、源泉徴収票は必ず確認しましょう。 - 退職金を受け取り、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
→ この申告書が未提出だと、退職所得控除が反映されず、税金が本来より多く差し引かれている可能性があります。確定申告を行えば、払いすぎた税金が戻るケースがあります。 - フリーランスとしての収入(開業後の事業所得など)がある場合
→ 独立後に継続して収入を得ている場合、事業所得として申告が必要です。青色申告を希望する場合は事前の手続きも必要になります。 - 医療費控除や生命保険料控除などを適用したい場合
→ 医療費が一定額以上かかった場合や、生命保険料を支払っている場合は、確定申告を行うことで所得控除を受けられます。
これらに該当する方は、申告によって払いすぎた税金を取り戻したり、各種控除を受けて税負担を軽減できる可能性があります。
確定申告の提出期間は、通常翌年2月16日から3月15日までです。早めの準備を心がけましょう。
所得別のポイント整理|退職金・失業給付・アルバイト・事業所得

退職後の状況によって、確定申告が必要になる理由はさまざまです。
ここからは、退職金や失業給付、アルバイト収入、開業後の事業収入など、退職後に得られる各所得の取扱いと注意点を、わかりやすく整理していきます。
所得の種類 | 課税対象 | 確定申告の要否 | 主な注意点 |
---|---|---|---|
退職金 | 課税対象(退職所得) | 提出不要な場合が多い | 申告書未提出なら控除適用外 申告で還付可能な場合あり |
失業給付 | 非課税 | 不要 | 給付自体は非課税 申告不要 |
アルバイト収入 | 課税対象(給与所得) | 条件付きで必要 | 年末調整なしや事業収入と合算時に申告が必要 |
事業所得(開業後) | 課税対象(事業所得) | 必要 | 青色申告には事前申請が必要。経費計上で節税も可 |
それぞれの所得には異なる申告ルールがありますが、実際には複数の所得が同時に発生するケースが多いため、とくに開業後の「事業所得」については、申告時の取り扱いや注意点を把握しておくことが重要です。
次のセクションでは、開業後の収入が「事業所得」としてどのように扱われるのか、その特徴と申告時のポイントを確認していきましょう。
💡 退職金や失業給付に関する制度の詳細は、以下の公的サイトでご確認いただけます。
👉 詳しくはこちら: 退職金を受け取ったとき(退職所得)(国税庁)
👉 詳しくはこちら: 基本手当について(ハローワーク)
開業後の事業所得と確定申告の注意点

フリーランスとして開業後に得た収入は、原則として「事業所得」として扱います。これは、継続的に自らの責任で業務を行い、反復的に収入を得ている場合に該当します。
一方で、「雑所得」は一時的・副次的な収入に対して適用され、経費の計上範囲や税務上の取扱いが異なります。フリーランス薬剤師として継続的に働いている場合、通常は「事業所得」として扱われるのが一般的です。
事業所得として申告することで、以下のような支出を経費にできる可能性があります:
- 名刺作成費、白衣、業務用スマートフォンなどの仕事に必要な物品の購入費用
- 日本薬剤師会などへの会費や薬剤師賠償責任保険料
- 専門書籍やセミナー参加費、会計ソフトの利用料 など
こうした業務上の支出をきちんと記録し、帳簿に反映させることが、節税や正確な申告につながります。
また、青色申告を選択することで、最大65万円の特別控除や赤字の繰越控除といったメリットが受けられます。ただし、これには事前の「青色申告承認申請書」の提出と、帳簿作成・保存の義務があります。
提出までの流れと必要書類

確定申告の提出には、あらかじめ必要な書類をそろえておくことが重要です。退職金や給与、フリーランスとしての収入など、複数の所得がある場合は、それぞれの収入に対応する書類が求められます。
必要な書類一覧
- 給与所得の源泉徴収票(退職前の勤務先から発行)
- 退職所得の源泉徴収票(退職金を受け取った場合)
- 青色申告決算書 または 収支内訳書(事業所得がある場合)
- 控除証明書(生命保険料や地震保険料などの控除対象)
- 本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類)
💡 必要書類の中には、再発行に時間がかかるものもあるため、早めの準備を心がけましょう。
提出方法とスケジュール
確定申告の提出期間は、例年 2月16日〜3月15日 です。
提出方法は以下のいずれかを選べます:
- e-Tax(電子申告):自宅からインターネット経由で申告。青色申告の特別控除を最大限活用できます。
- 税務署窓口:紙の申告書を持参または郵送
e-Taxの利用には事前準備が必要ですが、効率的で控除の適用にも有利なため、多くのフリーランスにおすすめです。
添付書類と保存の注意点
- 領収書や帳簿は7年間の保存が義務付けられています(白色申告は5年間)。
- 紙の領収書は原則として紙のまま保存
- 電子で受け取ったデータは電子のまま保存
※スキャンして電子保存する場合は、電子帳簿保存法に基づいた要件を満たす必要があります。
👉 詳しくはこちら: 電子帳簿保存法の概要(国税庁)
💡 こうした保存義務は、青色申告の特典を活用するためにも重要です。
よくある質問(Q&A)

開業届を出していないと、事業所得で申告できない?
→ 申告は可能です。
実際に継続的な事業活動を行っている場合、開業届を提出していなくても「事業所得」として申告できるケースが一般的です。ただし、青色申告を希望する場合は、「開業届」と「青色申告承認申請書」の事前提出が必須なので注意が必要です。
青色申告と白色申告、どちらが有利?
→ 節税面で有利なのは青色申告です。
青色申告では、最大65万円の特別控除や赤字の繰越控除などが利用できます。ただし、複式簿記での帳簿作成と、申請書の提出が条件となります。帳簿作成に不安がある場合は、会計ソフトの導入がおすすめです。
退職金は確定申告が必要ですか?
→ 基本的には不要です。
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、退職金にかかる税金は源泉徴収で完結しています。
ただし、申告書を提出していない場合は退職所得控除が適用されず、税額が多くなっている可能性があるため、源泉徴収票を確認し、必要に応じて申告することで還付を受けられる場合があります。
失業給付は確定申告の対象になりますか?
→ 失業給付そのものは非課税なので、原則として確定申告は不要です。
ただし、受給中に収入を得ている場合(アルバイト・事業など)は、内容によっては確定申告が必要となることがあります。
まとめ|初めての確定申告は、早めの準備で安心を

会社を退職し、フリーランスとして働き始めた薬剤師の方は、給与所得や退職金、アルバイト収入、開業後の事業所得など、さまざまな収入を整理して確定申告する必要があります。
手続きを先延ばしにしてしまうと、必要書類の準備や帳簿の確認に追われてしまうことも。1月中に源泉徴収票を取得しておく、控除証明書をまとめておくなど、早めの行動が不安を軽減する第一歩です。
青色申告を希望する場合は、開業届と青色申告承認申請書の提出期限にも要注意。開業から2か月以内(または3月15日までの早い方)に提出が必要です。
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👉 退職後の制度や手続きについて詳しく知りたい方は、フリーランス薬剤師の退職後制度まとめをご覧ください。