退職した年やフリーランスとして独立した初年度は、税金や制度の扱いが大きく変わる時期です。
「給与の分はどうすればいい?」「退職金は申告が必要?」「失業手当はどう扱う?」――そんな疑問を抱える方も多いでしょう。
会社員時代は年末調整で完結していた税金の精算も、退職後は自分で確定申告を行う必要があります。
特に初年度は、給与・退職金・失業手当・開業後の事業所得など複数の収入が入り混じり、正しく理解していないと税金を払いすぎたり控除を逃したりするリスクがあります。
この記事では、実際にフリーランス薬剤師として独立した経験をもとに、
- 退職後に確定申告が必要になる理由
- どんなケースで申告が必要になるのか
- 申告に向けて押さえておきたい流れと準備
をわかりやすく整理しました。
これを読めば、退職後初めての確定申告を安心して進められる準備が整います。
ぜひ最後まで読み進め、不安を一つずつ解消してください。
では、まず退職後になぜ確定申告が必要となるのかから確認していきましょう。
確定申告とは?退職後に必要になる理由

会社員のときは、毎月の給与から所得税が天引きされ、年末に会社が「年末調整」で精算してくれていました。
そのため、多くの人にとって確定申告は不要で、医療費控除や副収入など特別なケースだけが対象でした。
ところが、退職すると年末調整は受けられず、自分で税金を精算しなければなりません。
さらに独立してフリーランスとして働き始めれば、給与ではなく事業所得が中心となり、自分で確定申告をして納税するのが基本となります。
つまり――
- 退職すると「年末調整」がなくなる
- フリーランスは自分の所得を自分で申告する必要がある
この2つが重なることで、フリーランスとして活動する以上、確定申告は毎年欠かせない手続きとなります。
特に初年度は給与・退職金・失業手当・事業所得など、複数の収入が入り混じることが多いため注意が必要です。
ただし、難しく感じる必要はありません。初年度の手続きを終えて仕組みを理解してしまえば、翌年以降は主に事業所得が中心となるため、よりシンプルに対応できます。
では次に、退職後や独立初年度に確定申告が必要となる具体的なケースを確認していきましょう。
確定申告が必要になるのはどんなとき?

退職後や独立初年度は、給与・退職金・失業手当・開業後の売上など、複数の収入が入り混じることが多くなります。
ここでは、所得の種類ごとに確定申告が必要となる代表的なケースを整理します。
退職までの給与(年末調整なしの場合)
年の途中で退職した場合、年末調整を受けられずに源泉徴収だけで止まっていることがあります。
この場合、税金が引かれすぎている可能性があり、確定申告をすれば還付を受けられるケースも少なくありません。
まずは退職前の勤務先から発行される「源泉徴収票」を確認しましょう。
退職金の取扱い(中退共を含む)
退職金を受け取る際は、通常「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出します。
提出済みなら源泉徴収で完結するため、申告は不要です。
ただし、未提出の場合は退職所得控除が反映されず、本来より多く課税されている可能性があります。確定申告を行うことで払いすぎた税金を取り戻せます。
勤務先が中小企業退職金共済(中退共)に加入している場合は、退職時に「退職金共済手帳」を受け取ります。その3枚目の「退職金請求書」に必要事項を記入・送付すれば通常は申告不要です。
👉 詳しくはこちら: 退職金を受け取ったとき(退職所得)(国税庁)
失業手当の取扱い(非課税だが副収入に注意)
失業手当そのものは非課税で、確定申告の対象外です。
ただし、受給中にアルバイトや業務委託等で副収入を得た場合は課税対象(所得が年間20万円超の場合)になります。これらは給与所得や事業所得(または雑所得)として確定申告に含める必要があります。
また、受給中に開業届を提出すると「就職した」と判断され、失業手当が打ち切りになることがあります。その代わり「再就職手当」の対象になることもあるため、失業手当を受け取ってから開業したい人はスケジュール管理には十分注意しましょう。
👉 詳しくはこちら: 基本手当について(ハローワーク)
開業後の事業所得(青色申告のメリット含む)
独立後に得た収入は原則として事業所得に区分されます。
継続的・反復的な収入は雑所得ではなく事業所得となるのが一般的です。
事業所得とすると、以下のような支出を経費に計上できます:
- 名刺作成費、白衣、業務用スマートフォンなど
- 薬剤師会費や賠償責任保険料
- 専門書籍、学会・研修費、会計ソフト利用料
さらに、青色申告を選択すれば最大65万円控除(電子申告等)や赤字の繰越控除といったメリットが得られます。
ただし、「青色申告承認申請書」の提出と帳簿付け・保存の義務があるため、早めの準備が必要です。
各種控除を受けたい場合(医療費・保険料など)
会社員時代は年末調整で処理されていた控除も、退職後は自分で申告しないと適用されません。
- 社会保険料控除(任意継続や国民年金保険料など)
- 医療費控除(年間10万円超の支出が目安)
- 寄付金控除(ふるさと納税。確定申告する場合はワンストップ特例はつかえません)
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoや企業型DCの掛金)
これらを申告することで、税負担を軽減できます。
このように、退職後や独立初年度は「申告が必要になるポイント」が複数あります。
見落とさないためには、収入源や支出の種類ごとに整理しておくことが大切です。
では次に、実際に申告を行うために必要な書類と、その流れを確認していきましょう。
確定申告に必要な書類と手続きの流れ

退職後や独立初年度の確定申告では、「どんな書類を準備するか」→「いつ・どうやって提出するか」→「申告後に何を保管するか」 の流れを押さえておくことが大切です。
ここでは、準備から提出・保存までの一連の手順を整理して確認していきましょう。
必要な書類をそろえよう
確定申告をスムーズに進めるには、必要な書類を事前に整理しておくことが欠かせません。退職までの給与、フリーランスとしての収入など複数の所得がある場合は、それぞれに対応する書類が必要です。
主に以下の4種類の書類が必要です。
- 給与所得の源泉徴収票(退職前の勤務先から発行)
- 青色申告決算書 または 収支内訳書(事業所得がある場合)
- 控除証明書(社会保険料やiDeCoの掛金など)
- 本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類)
💡 退職金を受け取った方へ
通常は「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば確定申告不要です。
未提出の場合に限り、「退職所得の源泉徴収票」が必要になります。
💡 書類によっては再発行に時間がかかるため、早めの準備が安心です。
提出方法と期限を確認しよう
確定申告の提出期間は 例年2月16日〜3月15日 です。提出方法は大きく分けて次の2種類です。
- e-Tax(電子申告):自宅から送信でき、青色申告控除を最大限活用できる。
- 窓口・郵送:紙ベースでも提出可能ですが、青色申告特典の一部は活用できないため注意が必要。
e-Taxの利用にはマイナンバーカード等の事前準備が必要ですが、効率的で控除の面でも有利なため、多くのフリーランスにおすすめです。
添付書類と保存のルールを知ろう
確定申告後も、関連書類の保管が義務付けられています。
- 領収書や帳簿:青色申告は7年間、白色申告は5年間の保存義務あり。
- 電子データ:電子で受け取った領収書・請求書は電子のまま保存。
- 紙を電子化する場合:電子帳簿保存法に基づいた要件を満たす必要あり。
👉 詳しくはこちら: 電子帳簿保存法の概要(国税庁)
必要な書類や提出方法を押さえれば、申告の準備は整います。
では最後に、初年度の確定申告で大切なポイントをまとめて確認していきましょう。
まとめ|初めての確定申告は、早めの準備で安心を

退職後にフリーランスとして働き始めると、給与・退職金・失業手当・事業所得と複数の収入を整理して確定申告する必要があります。
確定申告は2月16日〜3月15日ですが、1月中までに源泉徴収票を受け取る、控除証明書をまとめるといった早めの行動が安心につながります。
さらに、青色申告を希望する場合は「開業届」と「青色申告承認申請書」を開業から2か月以内(または3月15日までの早い方)に提出しなければなりません。期限を逃すと大きな控除を使えなくなるため注意しましょう。
ここまでの流れを押さえたら、あとは実際の申告に取りかかるだけです。
✅ 次に進めるアクションはこちら:
👉 実際の申告書作成手順(e-Taxや会計ソフトの操作画面)は、こちらの記事で解説しています
[マネーフォワード確定申告ガイド|応用編:クラウド帳簿+国税庁サイトで申告する方法(準備中)]
👉 確定申告をもっと効率化したい方におすすめ
マネーフォワードクラウド確定申告|公式サイトはこちら
退職後に必要な他の制度や手続きについても、以下の記事でまとめていますので、あわせてチェックしてみてください。
👉 フリーランス薬剤師の退職後手続きまとめ|健康保険・年金・税金の対応をまとめて解説
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