「フリーランスになったら、銀行口座って分けたほうがいいの？」
開業準備を進める中で、そんな疑問を感じたことはありませんか。
私も、フリーランス薬剤師として独立の準備をしていた頃は、
「個人の口座でも十分では？」と思っていました。
ところが、開業費の整理を始めたときに、
経費・生活費が同じ口座で混ざっていると、思った以上に管理が煩雑なことに気づきました。
クレカの明細を見返しても「これは開業準備で使った支出？ それとも日常の買い物？」と判別に時間がかかり、想像以上に手間が増えたのです。
そこで事業用口座を分けてみたところ、入出金の整理が一気にスムーズになりました。
毎月の収支や残高もすぐに把握できるようになり、
“お金の流れを分けて管理するだけ”で、仕事への安心感がぐっと増した実感があります。
この記事では、そんな実体験をもとに次の3つを整理して解説します。
- なぜ事業用口座を分ける必要があるのか
- フリーランスが銀行を選ぶ際のポイント
- 筆者が実際に利用している楽天銀行の開設手順と使い勝手
事業用口座を整えることは、単なる“開業準備のひとつ”ではなく、
フリーランスとして安定して働き続けるための基盤づくりです。
この記事を読めば、自分に合った口座をスムーズに選び、日々のお金管理をラクに進めるヒントが見つかるはずです。
まずは基本｜事業と家計の口座は分けておこう
フリーランスとして働き始めると、報酬の受け取りから経費の支払い、生活費の管理まで、すべて自分で行うことになります。
最初のうちは「今ある個人口座で十分」と感じるかもしれませんが、実際に記帳を始めてみると、「これは経費？それとも生活費？」と迷う場面が増えます。
こうした確認作業が積み重なると、帳簿づけのたびに時間を取られ、経費の記録漏れにつながることもあります。
こうした混乱を防ぐために大切なのが、お金の流れを分けておくことです。
事業用と家計用で口座を分けておくだけで、帳簿づけがぐっとスムーズになり、毎月の収支も見通しやすくなります。
特に、次のような点で大きなメリットがあります。
- 記帳・確定申告がスムーズになる
事業の入出金をひと目で把握でき、会計ソフトとの連携もラクになります。 - 経営状況をすぐに把握できる
売上や経費の流れが整理され、判断ミスを防げます。 - 帳簿の透明性が高まり、信頼性が上がる
取引の記録が明確になり、必要なときにスムーズに説明できます。
基本的には、銀行が提供している「個人事業主（ビジネス）向け口座」を利用するのが安心です。
取引内容をきちんと分けられるだけでなく、“仕事用の口座”としての体裁が整い、取引先とのやり取りでも信頼性が高まります。
とはいえ、フリーランスや小規模事業では、個人口座を利用しているケースも実際には多く見られます。
銀行としては「個人口座を事業目的で使うこと」は原則として推奨していませんが、
現実的には、取引の多くが個人名義のまま行われていることもあり、完全に線引きするのは難しいのが実情です。
重要なのは「どの口座を使うか」よりも、「お金をどう整理して管理するか」という点です。
事業と家計を明確に分けておくことで、経理の混乱を防ぎ、安心して仕事を続けられる基盤を作ることができます。
では、どんな銀行を選び、家計用の口座とどう使い分けると便利なのか。
ここからは、その具体的なポイントを見ていきましょう。
どの銀行を選ぶ？家計との使い分けを考える
事業用口座を分ける必要性がわかったら、次は「どの銀行を選ぶか」を決める段階です。
フリーランスにとっては、コスト・使いやすさ・会計ソフトとの連携の3点が判断基準になります。
最近では、口座維持費が無料で手続きもオンラインで完結する「ネット銀行」が主流です。
家計でもネット銀行を使っている人が多いため、
「家計口座とどう使い分けるか」まで意識して選ぶと、後々の管理がぐっとラクになります。
ネット銀行が主流。まずは3つの選択肢から
現在、フリーランスが事業用口座として選ぶ主な選択肢は、
楽天銀行・住信SBIネット銀行・GMOあおぞらネット銀行の3つです。
いずれもオンライン完結で口座維持費が無料、
振込手数料も比較的安く、マネーフォワードなどの会計ソフトとスムーズに連携できます。
開業初期の段階では、この3行のいずれかを選べば大きな問題はありません。
一方で、メガバンクや地方銀行は「通帳があって安心」「信用がありそう」といった印象を持たれがちですが、振込手数料が高く、手続きも対面中心です。
店舗へ行く手間を考えると、普段の入出金がネットで完結するネット銀行のほうが実用的です。
家計との使い分けパターンを考える
家計用のメインバンクは楽天銀行か住信SBIネット銀行のどちらか――
あるいは両方を使い分け、というケースが最近は多いと思います。
どちらも利便性が高く、積立や自動振込、ポイント連携など、個人利用に適しています。
そのため、事業用口座を選ぶときは、家計でどの銀行を使っているかに合わせて整理すると混同を防ぎやすくなります。
以下は一例です。
- 家計で住信SBIネット銀行、事業で楽天銀行（個人口座）を利用
住信SBIを生活費や貯蓄用として使い、事業用の入出金は楽天銀行に集約。
振込・残高確認の操作感も安定しており、会計ソフトとの連携もスムーズです。 - 家計で楽天と住信SBIの両方を併用、事業で楽天銀行（個人ビジネス口座）またはGMOあおぞらネット銀行を利用
家計と事業を完全に分離したい場合におすすめの構成。
屋号付き名義で開設できる「楽天銀行個人ビジネス口座」や、API連携が強い「GMOあおぞらネット銀行」を選べます。
どの銀行にも一長一短がありますが、
開業初期のフリーランスには「維持費ゼロで使いやすく、会計ソフトと連携しやすい」ネット銀行が実用的です。
最終的には、手数料よりも“続けやすさ”――画面の見やすさや操作性など、日々のストレスが少ない環境を選びましょう。
“手間なく続けられる仕組み”こそが、結果的に一番のコスト削減につながります。
ここからは、筆者が実際に選んだ楽天銀行の「個人ビジネス口座」について、
選んだ理由と実際の使い方を紹介します。
楽天銀行を選んだ理由と実際の使い方
筆者は、事業用口座として楽天銀行の「個人ビジネス口座」を利用しています。
もともと開業前は、家計用に楽天銀行、給与口座からの資金移動に住信SBIネット銀行を使っていました。
当時はGMOあおぞらネット銀行の存在を知らなかったため、
開業届を提出したタイミングで半ば消去法で楽天のビジネス口座を開設しました。
ただ、結果的に快適に運用できています。
筆者の運用では、以下の点でほぼ手作業の管理は不要です。
- 入出金通知：報酬の入金はメールで自動通知。ブラウザで残高もすぐ確認可能。
- 支払い処理：経費の支払いはクレジットカードに集約し、引き落としを自動化。
- 生活費の送金：「毎月おまかせ振込予約」で定額送金を設定し、家計口座との連携もスムーズ。
- 現金支出の対応：現金が必要な場面はプライベート口座で立替え、後から帳簿上で処理。
こうした仕組みを整えることで、月に1〜2回の確認だけで運用が完結しています。
同行間の振込手数料は52円と低コストで、プライベート口座への資金移動も負担になりません。
日常的な振込や定期送金を考えても、コスト面での不満はほとんど感じませんでした。
会計ソフト（マネーフォワード）との連携も非常にスムーズで、入出金データが自動で反映されるため、経理の手間は最小限です。
手入力や仕訳の確認に時間を取られず、自然に記帳が続けられる点は大きなメリットです。
楽天経済圏のポイント還元は基本的に対象外ですが、事業用として使ううえではむしろ潔いです。
「特典に左右されず、必要な機能だけに集中できる」という点で、シンプルに管理できています。
屋号付きの名義も選べますが、筆者は個人名のままで問題なく運用できています。
なお、キャッシュカードは任意発行で、開設時に届くのは取引認証用の「セキュリティカード」です。
現金を扱う機会が少ない場合はカードなしでも困る場面はほぼなく、必要になったときに申し込めば十分です。
総じて、楽天銀行個人ビジネス口座は
「オンライン完結・低コスト・会計連携のしやすさ」を兼ね備えた実用的な選択肢です。
派手さはありませんが、開業初期の資金管理を安定して支えてくれる扱いやすい口座です。
では次に、実際の口座開設方法について説明します。
口座開設の流れ｜申込み〜利用開始まで
楽天銀行の「個人ビジネス口座」は、オンラインで申し込みを行い、開業届（e-Tax提出控え可）の写しを郵送で提出する仕組みです。
筆者の実体験では、申し込みから利用開始までおおよそ3週間ほどかかりました。
完全オンラインでは完結しませんが、流れを把握しておけば手続き自体はシンプルです。
個人口座をすでに持っていることが前提となるため、まだ開設していない方は先に個人口座を準備しておきましょう。
ステップ1｜口座開設の申込み
まずは楽天銀行の公式サイトから、個人ビジネス口座の申込みを行います。
- 楽天銀行の「個人事業主のお客さま」ページを開く
- 「個人ビジネス口座開設申込み」をクリック
- 楽天銀行の個人口座（プライベート口座）にログイン
- ログイン後、下にスクロールして「個人ビジネス口座開設」を選択
- 「個人ビジネス口座を開設する」をクリック
- 同意事項の確認や必要情報を入力（屋号が不要な場合はピリオド「.」を入力）
- 確認画面で個人口座の暗証番号を入力し、申込みを確定
- 完了画面が表示されたら申込み完了（登録番号は控えておく）
- 申込み完了後、確認メールが届く
楽天銀行公式サイトを開く
楽天銀行の個人口座へログイン
ステップ2｜開業届などの書類を郵送
申し込みから数日後、楽天銀行から「ご案内」と「返信用封筒」が届きます。
事業の実在を確認するため、次のいずれかの書類を1点提出します。
- 個人事業の開業届（コピー）
- 個人事業開始申告書（コピー）
- 商業登記簿謄本（原本）
個人事業主の場合は、開業届の写しで問題ありません。
もっとも手間がかからず、一般的な提出書類です。
なお、税務署の収受印付き控えがない場合は、
e-Taxの「受信通知（画面印刷）」と「開業届（申請データ）」を印刷して提出します。
いずれの場合も、右上に「登録番号」を記載する必要があります（印刷・コピーした書類すべてに手書きで記入します）。
書類がそろったら、返信用封筒に入れてポストへ投函します。
💡 e-Tax提出時の印刷手順（例）
- e-Taxにログインする
マイナポータルと連携している方は、マイナポータル経由でのログインが簡単です。 - 「メッセージボックス」→「受信・お知らせ通知」を開く
- 「個人事業の開業・廃業等届出」を選択
- 「受信通知」を印刷（PDF保存しておくと再利用可）
- 「帳票を表示する」をクリックし、開業届のPDFをダウンロード・印刷
- 印刷した「受信通知」と「開業届（申請データ）」の右上に登録番号を手書きで記入
e-TAXへログイン
💬 この方法（開業届（e-Taxの受信通知と申請データの印刷）のみの提出）で筆者は問題なく審査を通過できましたが、業種や申告内容によっては、契約書や請求書などの追加資料を求められるケースもあるようです。
ステップ3｜開設完了メールの受信と初回ログイン
書類の提出が完了すると、審査を経て口座開設の準備が整います。
楽天銀行から「個人ビジネス口座開設の準備が整いました」という件名のメールが届いたら、初回ログイン設定を行いましょう。
- 楽天銀行の個人口座（プライベート口座）にログイン
- ページ下部（フッター）にある「個人ビジネス口座開設」をクリック
- 「個人ビジネス口座開設申込み 閲覧・参照」画面で、開設状態が「手続き完了」になっていることを確認
- 「仮ログインパスワードを取得する」をクリック
- 個人口座の暗証番号を入力し、支店番号・口座番号・仮ログインパスワードをメモ
- 楽天銀行のログイン画面で、初期ログインID（支店番号＋口座番号の10桁）と仮パスワードを入力してログイン
- 初回ログイン後、ユーザーID・パスワード・暗証番号を設定
- 再ログインして、ワンタイムパスワード用メールアドレスと合言葉（追加認証）を登録
- 設定が完了すると、利用開始できます
楽天銀行の個人口座へログイン
楽天銀行のログイン画面へ移動
ログイン後、ユーザーID・パスワード・暗証番号を設定します。その後、再度ログインしてメールアドレスと合言葉を設定し、利用を開始します。
補足｜会計ソフトとの連携も忘れずに
口座の利用を開始したら、マネーフォワードなどの会計ソフトと連携しておくのがおすすめです。
入出金データを自動で取得できるため、仕訳や帳簿作成の手間を大幅に削減できます。
マネーフォワード クラウド確定申告に登録する際は、【法人】楽天銀行を選択します。
連携設定は数分で完了し、一度設定すれば自動で同期されるため、日々の記帳がスムーズになります。
設定画面の例は、以下の記事で紹介しています。
👉 事業用会計ソフトの始め方｜マネーフォワードで始める帳簿づけの第一歩（楽天銀行（個人ビジネス口座）は「法人」を選択）へ
（楽天銀行個人ビジネス口座との連携手順をスクリーンショット付きで解説）
この流れを押さえておけば、楽天銀行の個人ビジネス口座はスムーズに開設できます。
書類の準備と登録番号の記載を忘れずに、早めに手続きを進めておきましょう。
では最後に、実務経験を踏まえた口座選びのポイントを整理します。
まとめ｜“分けて管理する仕組み”が安心につながる
フリーランスにとって、お金の流れを分けて管理することは、日々の実務を整え、将来の安心をつくる第一歩です。
事業と家計の口座を分けるだけで、経費の把握が正確になり、確定申告の手間も減ります。
また、どの銀行を選ぶかは「手数料の安さ」よりも「続けやすさ」が大切です。
家計で使っている銀行との使い分けや、会計ソフトとの相性を意識して選ぶことで、
日常の管理がぐっとシンプルになります。
そのうえで、開業初期のうちはネット銀行で始めるのが現実的です。
口座維持費が無料で、手続きもオンライン完結。
特に楽天銀行や住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行のように、
マネーフォワードなどの会計ソフトとスムーズに連携できるサービスを選ぶと、
日々の記帳も自動化できます。
もし実際に始めるなら、筆者が利用している楽天銀行の個人ビジネス口座もおすすめです。
完全オンラインではなく少し手間はかかりますが、
この記事の流れを参考にすれば迷わず手続きできるはずです。
開設後にマネーフォワード クラウド確定申告と連携すれば、
入出金データが自動で反映され、帳簿づけの手間も大きく減ります。
こうした“分けて管理する仕組み”を早めに整えておくことが、
クレジットカード導入や帳簿づけ、確定申告をスムーズに進める鍵になります。
この記事が、フリーランスとしての「お金の流れを整える」第一歩になれば幸いです。
✅ 次に進めるアクションはこちら：
まずは、事業用口座の開設から始めてみましょう。
以下の公式サイトからオンラインで申し込みできます。
👉 楽天銀行｜個人ビジネス口座開設申込（公式サイト｜オンライン申込みはこちら）
口座が整ったら、支払いと会計の仕組みも一緒に整えておくと、管理がぐっとラクになります。
👉 事業用クレジットカードの始め方｜楽天カードを分けて使うだけで簡単管理
👉 事業用会計ソフトの始め方｜マネーフォワードで始める帳簿づけの第一歩
会計処理を効率化したい方は、実務での仕訳・帳簿づけまで解説したこちらも参考にどうぞ。
👉 マネーフォワード確定申告ガイド｜実務編：データ連携から仕訳登録までの使い方
お金まわりの準備を含めた全体像は、こちらの記事でまとめています。
👉 フリーランス薬剤師の開業準備まとめ｜独立前に必要な実務と手続きをまとめて確認
こうした準備をひとつずつ整えていくことで、フリーランスとしてのお金の管理がぐっとスムーズになります。