退職後の年金、何から始めればいい?
退職してフリーランス薬剤師として独立したあと、年金や保険などの社会保障制度に不安を感じる方も多いのではないでしょうか?
私自身も、最初に直面したのは「健康保険と年金、どう切り替えればいいのか分からない」という戸惑いでした。
特に年金については、仕組みが複雑で「いつまでに何をすればいいのか?」が見えづらく、後回しにしがちです。ですが、手続きを放置すると未納期間が発生し、将来の年金額が減ってしまうリスクもあります。
本記事では、退職後の年金制度を正しく理解し、必要な手続きを抜け漏れなく進められるよう、フリーランス薬剤師の実体験をもとに、以下のような内容を整理して解説します:
- 国民年金への切り替え手続きと必要書類
- マイナポータルでのオンライン申請方法(自宅で完結したい方へ)
- 免除・猶予制度の使い方と注意点(収入が不安定な時の対策)
- 将来に備えるための「上乗せ制度」(iDeCo・付加年金など)
制度の概要だけでなく、「実際にどう手続きすればいいのか」がわかる内容になっています。
この記事を読めば、年金手続きの全体像がつかめて、今の自分に必要な行動が明確になるはずです。
厚生年金の喪失と国民年金への切り替え|退職後に必要な手続きとは?

退職すると、それまで勤務先を通じて加入していた「厚生年金保険」の資格を失います。
つまり、会社員時代のように自動で保険料が引き落とされる仕組みはなくなり、今後は自分で年金制度の手続きを行う必要があります。
厚生年金の資格は、退職日の翌日をもって喪失します。
20歳以上60歳未満の方は、原則として国民年金(第1号被保険者)への切り替えが必要です。
これは、日本の年金制度が「全員加入」を原則としているためです。
会社員であれば厚生年金、フリーランスや無職であれば国民年金といったように、日本の制度ではすべての人が何らかの年金制度に加入する必要があります。
この加入状況は、将来の年金受給資格や受け取れる年金額に直結します。
また、切り替えを怠って未加入期間が発生すると、将来的な年金額の減少や納付記録の不備につながる恐れもあります。
国民年金への切り替え手続きは、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で行うのが原則です。
忘れずにスケジュールを確認して、早めの対応をおすすめします。
国民年金への切り替えが必要だとわかっても、実際にどこで、どのような手続きをすればいいのかは分かりづらいものです。
ここからは、市区町村での手続き方法や必要書類、期限などをわかりやすく解説していきます。
国民年金への切り替え方法と必要書類|退職後の届出の流れ

国民年金への切り替えは、住民票のある市区町村の窓口で行うのが一般的ですが、対応している自治体にお住まいであれば、マイナポータルを利用して自宅からオンラインで手続きすることも可能です。
ここでは、窓口・オンライン両方の手続き方法と必要書類について解説します。
窓口での手続き|必要書類と進め方
国民年金への切り替えは、住民票のある市区町村の窓口で行います。
手続きは、退職日の翌日から14日以内に行う必要があり、必要書類を持参して窓口で申請します。
✅ 窓口申請に必要なもの
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 離職票や退職証明書など、退職日を確認できる書類
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(必要な自治体のみ)
※自治体によって必要書類や印鑑の有無が異なるため、事前に市区町村の公式サイトなどで確認しておくのがおすすめです。
👉 詳しくはこちら: 国民年金の加入手続きについて(日本年金機構)
手続きは一般的には30分〜1時間程度で完了します。
混雑を避けるなら、午前中の早い時間に行くと比較的スムーズです。
自宅から申請する場合|マイナポータルの活用
市区町村の窓口に行かなくても、マイナポータルを使えば自宅から年金関連の手続きが可能です。
対応している自治体に住んでいる場合は、オンライン手続きも選択肢として検討できます。
マイナンバーカードとスマートフォン等があれば、自宅から手続きできます。
👉 詳しくはこちら: マイナポータル|対応している手続き一覧
✅ オンライン申請に必要なもの
- マイナンバーカードと暗証番号(4桁・6〜16桁)
- ICカードリーダー または対応スマートフォン
- インターネット環境(パソコンやスマホ)
- マイナポータルの利用者登録(初回のみ)
※スマートフォンでの利用には専用アプリのインストールが必要です。
💬 筆者の場合:私自身も、国民年金の切り替えと付加年金の申込みをマイナポータルから申請しました。初回の利用登録や環境準備は少し手間でしたが、役所に行かずに完結できたのは非常に便利でした。
国民年金への切り替え手続きが完了すると、原則として保険料の納付が始まります。
ただし、退職直後は収入が減るタイミングでもあり、「保険料の支払いが負担に感じる…」という方も多いかもしれません。
そんなときは、保険料の「免除」や「納付猶予」といった制度を活用することで、無理なく年金制度に加入し続けることができます。
年金保険料がきびしいときは|免除・猶予制度を確認しよう

退職してフリーランスとして独立した直後は、収入が安定せず、年金保険料の支払いを負担に感じることもあるかもしれません。
そんなときに活用できるのが「免除・猶予制度」です。
✅ 主な制度の種類と対象者
- 全額免除:本人や世帯主・配偶者の所得が一定基準以下の場合
- 一部免除:一定所得を超えるが全額支払いが困難な場合(1/4〜3/4免除)
- 納付猶予:50歳未満で所得が基準以下の場合(学生納付特例と同様)
- 特例免除(失業):退職により失業中で、前年所得にかかわらず申請できる場合
どの制度が適用されるかは、前年所得・家族構成・退職状況によって異なります。
まずは市区町村の窓口や公式サイトで条件を確認してみましょう。
👉 詳しくはこちら: 国民年金保険料の免除・納付猶予制度(日本年金機構)
退職直後は年金保険料の負担を軽くする制度が心強い味方になりますが、ある程度生活が落ち着いてきたら、将来の年金額を増やす制度についても検討してみましょう。
次は、国民年金に「上乗せ」できる3つの制度(iDeCo・付加年金・国民年金基金)をご紹介します。
将来の年金に備える3つの制度|iDeCo・付加年金・国民年金基金

フリーランスとして独立すると、「老後に受け取れる年金が本当に足りるのか?」という不安を感じることもあるかもしれません。
そんなときに活用できるのが、国民年金に上乗せして加入できる制度です。
主に選べるのは次の3つ:
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 付加年金
- 国民年金基金
なお、付加年金と国民年金基金はどちらか一方しか選べません(併用不可)。
それぞれの制度には特徴や向き不向きがあるため、ライフスタイルや資金状況に応じて検討してみましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 掛金が全額所得控除となり、節税効果が高い
- 運用益も非課税。自分で投資先を選んで老後資金を積み立てる
- 原則60歳以降に一時金(退職金扱い)または年金として受け取り可能
💬 筆者の場合:もともと会社員時代からiDeCoを利用していたため、フリーランスに転向後は「第2号被保険者 → 第1号被保険者」への種別変更が必要でした。
証券会社(楽天証券)の管理画面から手続きし、郵送対応となったため少し時間はかかりましたが、変更を忘れると掛金が拠出されなくなるため注意が必要です。
👉 詳しくはこちら: iDeCo公式サイト|制度の概要と手続き
付加年金
- 国民年金に月額400円を上乗せするだけで、将来の年金額が増える制度
- 「納付月数 × 200円」が年額で加算される(例:20年加入で年48,000円の増額)
- 国民年金基金とは併用不可
💬 筆者の場合:国民年金の切り替え手続きと同時に、付加年金にも加入しました。月額の負担が少なく、費用対効果の高さが魅力です。
👉 詳しくはこちら: 付加年金制度の詳細(日本年金機構)
国民年金基金
- 公的年金に上乗せして、終身年金または確定年金として受け取れる制度
- 掛金や受取方式(終身/一定期間)を自分で選べる
- 掛金は全額所得控除対象
💬 筆者の考え:制度として魅力がないわけではありませんが、現時点ではiDeCoと付加年金の方が自分のライフスタイルに合っていると感じたため、加入は見送りました。
👉 詳しくはこちら: 国民年金基金連合会|加入とシミュレーション
フリーランスとして独立したばかりの時期は、年金の負担や将来への不安を感じることもあるかもしれません。
今回ご紹介した制度をうまく活用すれば、無理なく保険料を支払いながら、将来の備えも少しずつ整えることができます。
最後に、この記事のポイントを簡単にまとめておきます。
退職後の年金手続き|押さえておきたい5つの基本ポイント

退職後の年金については、以下の5つのポイントを押さえておくことで、安心して手続きを進めることができます:
- 厚生年金の資格を喪失したら、自分で国民年金に加入する
会社を退職すると、勤務先経由で加入していた厚生年金の資格を失います。20歳以上60歳未満の人は、自分で国民年金に切り替える必要があります。 - 切り替え手続きは退職日の翌日から14日以内に行う
加入手続きを怠ると未納期間が発生し、将来の年金額や受給資格に影響が出る恐れがあります。 - 保険料の負担が大きいときは、免除・猶予制度を活用する
全額・一部免除や納付猶予などの制度を活用することで、経済的な負担を軽減できます。 - 老後が不安な方は、上乗せ制度の活用も検討する
iDeCo・付加年金・国民年金基金などを活用すれば、将来の年金額を増やすことが可能です(※付加年金と国民年金基金は併用不可)。 - 年金制度は老後の生活の基盤。加入を途切れさせないことが大切
特に国民年金は基礎年金として一生涯支給されます。空白期間を作らないよう、退職後は意識して対応しましょう。
退職直後は慌ただしいことも多いですが、年金手続きには期限があります。必要な書類や制度内容を確認し、自分に合った方法で備えていきましょう。
✅ 将来の年金額を試算してみよう:
フリーランスに移行すると、厚生年金から国民年金(基礎年金)のみに切り替わるため、将来の年金額が大きく減る可能性があります。
まずは「自分が将来いくら年金をもらえるのか」を知っておくことが大切です。
「ねんきんネット」では、フリーランス転向後の収入や働き方を反映させた、将来の年金額をシミュレーションすることもできます。
見込額を把握することで、iDeCoや付加年金など「どれくらい上乗せが必要か」の検討にも役立ちます。
👉 ねんきんネット(日本年金機構)|将来の年金額を確認・試算
※アカウントを作成すれば、これまでの納付履歴や将来の見込額を確認できます。
また、退職後に必要な他の制度や手続きについても、以下の記事でまとめていますので、あわせてチェックしてみてください。