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フリーランス薬剤師の退職後手続きまとめ|健康保険・年金・税金の対応をまとめて解説

退職後の手続きまとめ(アイキャッチ画像) 退職・開業準備ガイド
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Nao@フリーランス薬剤師

Nao@フリーランス薬剤師|調剤薬局と業務委託契約中
病院・薬局での経験を活かし、自由な働き方やお金の知識をブログで発信しています。
薬剤師免許・認定薬剤師・簿記3級・FP3級保有

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「健康保険はどうする?」「年金は切り替えが必要?」「税金はどうやって納める?」
退職してフリーランス薬剤師として独立する際には、こんな疑問や不安が次々と出てきます。

私自身、調剤薬局を退職し、同じ職場で業務委託契約に切り替えた初年度は、社会保険や税金の手続きにかなりの時間と労力を費やしました。

この記事では、その経験と実際に行った手続きをもとに、退職後に必要な社会保険・税金関連のポイントをテーマ別にわかりやすく解説します。

読み進めれば、健康保険・年金・失業手当・住民税・所得税などのポイントが一目でわかり、退職から独立への移行をスムーズに進められるようになります。

正しい知識と準備があれば、手続きは決して難しくありません。これからフリーランス薬剤師として新たな一歩を踏み出す方の、不安を少しでも軽くできれば幸いです。

健康保険の手続き|任意継続・薬剤師国保・その他の選択肢

退職後制度まとめ|健康保険

退職により会社の健康保険資格を喪失するため、フリーランスとして新たな健康保険制度に加入する必要があります。
フリーランス薬剤師の場合、任意継続と薬剤師国保は、退職直後に検討されることの多い現実的な選択肢です。

任意継続(任意継続被保険者制度)
会社員時代の健康保険を最長2年間継続できる制度。保険料は全額自己負担となりますが、上限があるため一定の収入層には割安になることもあります。
申請には期限(退職後20日以内)があるため、早めの手続きが必要です。2年の期間中でも、必要に応じて薬剤師国保や市町村国保に切り替えることができます。その逆はできません。

薬剤師国保(薬剤師国民健康保険組合)
薬剤師向けの国保組合。所得に関係なく保険料が定額なので、高所得者に有利になることも
ただし、地域や勤務形態により加入条件が異なる(地域によっては保険料が年収に比例したり、勤務先の所在地が対象地域である必要があったりする)ため、事前確認が必須です。

その他の制度について
・市区町村の国民健康保険:所得に応じた保険料。薬剤師国保に加入できない場合や、開業初期に検討されることも。
・配偶者の扶養に入る:年収要件を満たせば可能。ただし、継続的な事業収入がある場合は難しいです。

✅ 筆者の場合:全国健康保険組合(協会けんぽ)のHPで保険料を試算した結果、標準報酬月額の上限に掛かっており任意継続の方が安く抑えられたため、申請期限を確認のうえで選択しました。

👉 健康保険の制度比較や選び方の詳細は、以下の記事をご覧ください。
退職+フリーランス初年度の健康保険ガイド|薬剤師国保・任意継続を徹底比較

国民年金の切り替えと老後資金への備え

退職後制度まとめ|年金

会社を退職すると、厚生年金の資格がなくなるため、20歳以上60歳未満の方は原則として国民年金に加入し直す必要があります。
手続きは、退職後14日以内に住民票のある市区町村で行いましょう。

保険料の納付が難しい場合は、所得状況などに応じて「免除」や「猶予」といった制度も利用できます。特に退職による失業は特例の対象になりやすく、前年の所得にかかわらず申請可能なケースもあります。

将来の年金に不安がある方は、国民年金に上乗せして給付を増やす制度(付加年金やiDeCo、国民年金基金など)の活用も検討するとよいでしょう。

✅ 筆者の場合:退職後すぐに、マイナポータルから国民年金への加入手続きを行い、その際に付加年金の納付手続きも同時に行いました。あわせて、もともと利用していたiDeCoについては、国民年金加入手続き後に証券会社で種別変更(会社員(2号)→自営業(1号))の手続きを行いました。

👉 年金の切り替え手続きや各制度の詳細は、以下の記事をご覧ください。
退職+フリーランス初年度の年金手続きガイド|切り替え・免除・iDeCoも解説

退職後の失業手当|受給条件と伝え方に注意

退職後制度まとめ|失業給付

「失業手当」とは、正式には雇用保険制度における「基本手当(失業給付の一部)」のことです。

退職後にフリーランスとして独立を考えている場合でも、一定の条件を満たせば受給できる可能性があります。

受給には、以下の条件を満たす必要があります:

  • 自己都合退職:7日間の待機期間+給付制限1か月(※2025年4月以降)
     ※ただし、過去5年以内に3回以上自己都合退職している場合は、給付制限3か月
  • 会社都合退職:7日間の待機期間のみ

いずれの場合も、「離職票」の提出と、「就職の意思を示す求職活動」が必要です。

なお、フリーランスとしての開業を予定している場合でも、準備段階にとどまっており、就職の意思があると認められれば、受給できるケースもあります。

✅ 筆者の場合:退職後すぐにフリーランス薬剤師としての業務をスタートしたため、失業手当の申請は行っていません。その代わり、後から受給できるようにするための「受給期間延長の特例(受給開始期限を延ばせる制度)」を退職後に申請しました(2ヶ月以内の手続きが必要です。詳細は下記リンク先の記事で延長手続きの条件や申請方法も含めて詳しく解説しています)。

👉 失業給付の申請条件や注意点については、以下の記事をご覧ください。
退職+フリーランス初年度の失業給付ガイド|受給条件・伝え方・注意点をわかりやすく解説

住民税の手続き|退職時期によって支払い方法が変わる

退職後制度まとめ|住民税

住民税は前年の所得に基づいて課税され、1月1日時点の住所地で納税義務が発生します。 退職後も前年の所得に応じた住民税の支払いが必要です。

会社員時代は給与からの「特別徴収(天引き)」でしたが、退職後は「普通徴収(納付書)」へと切り替わります。

1月〜5月に退職した場合は、残りの住民税が退職時の給与や退職金から一括で差し引かれるのが通常です。

6月〜12月に退職した場合は、市区町村から納付書が届き、それにより納付します。 支払いは年4回(6月・8月・10月・翌年1月)の分割払いですが、一括での納付(各納付書がまとめて届きます。)も可能です。キャッシュレス払い(クレジットカードやQRコード決済(PayPayなど)、インターネットバンキング、eLTAXによるダイレクト納付など)も可能ですが、地域によって利用できる支払い手段が異なるため確認が必要です。

なお、希望すれば勤務先に一括徴収(残りの住民税を一括で差し引いてもらうこと)を依頼できる場合もありますが、退職時の給与額によっては対応できないこともあるため、希望する場合は早めに相談しておきましょう。

住民税の支払いは前年の所得に基づくため、退職初年度は収入が減っても結構な金額を支払うことになります。まとめて支払うため、よりそう感じやすくなります。支払いに困らないように貯金はしておきましょう。

  • 例えば前年所得が500万円の場合、住民税は年間約24万5,000円です(独身・扶養無し・40歳未満の想定)。

✅ 筆者の場合:6月30日退職のため、7月以降は納付書による普通徴収で対応しました。支払い期限まで納付書を保管するのが面倒だったのでQRコード決済(PayPay)で一括納付しました。

所得税|確定申告が必要な主なケース

退職後制度まとめ|所得税

退職後の所得税に関する手続きは、確定申告を通じて行うのが基本です。

特に退職からフリーランスとして独立する初年度は、複数の収入や控除が絡みやすく、申告が必要になるケースも多くなります。

以下のようなケースに該当する場合、確定申告を行うことで、医療費控除や生命保険料控除など、本来受けられる控除を適用でき、結果として税金の還付を受けられる場合もあります。

  • 退職までの給与に年末調整が行われていない場合(所得税が過剰に引かれている可能性あり)
  • 退職金を受け取り、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
  • フリーランスとしての収入(開業後の事業所得など)がある場合
  • 医療費控除や小規模企業共済等掛金控除(例:医療費が年間10万円超、iDeCoや企業型DCの掛金など)などを適用する必要がある場合

確定申告の提出期間は、翌年の2月16日〜3月15日です。電子申告(e-Tax)を利用すれば、自宅からの申請も可能です。

※ここでいう「所得税の手続き」は、確定申告を通じた所得税の申告・納付を意味します。

退職金の申告要否と手続き

退職金を受け取る際に退職所得申告書を提出すれば、原則として確定申告は不要です。

なお、勤務先が中退共(中小企業退職金共済)に加入していた場合は、退職後に自分で退職金の請求手続きを行う必要があります。手続きは次のような流れが一般的です。

  1. 退職時に、会社から「退職金共済手帳(実際は3枚の書類)」を受け取る
  2. 「退職金請求書」(3枚目)に必要事項を記入し、郵送で提出(この3枚目に退職所得申告書の記載欄もあるので記載して提出すれば、原則として確定申告は不要)
  3. 数週間後、指定口座に退職金が振り込まれます

書類の記入と郵送だけで完了するため、難しい手続きは不要です。内容を確認しながら、落ち着いて対応すれば問題ありません。

筆者もこの流れで申請し、申請から振込までおおよそ3週間程度で退職金を無事に受け取ることができました(事前に振込通知書と源泉徴収票が郵送されます)。また、給与所得と事業所得をまとめて確定申告を行っています。

👉 所得税の確定申告が必要なケースや注意点の詳細は、以下の記事をご覧ください。
退職+フリーランス初年度の確定申告ガイド|薬剤師向けに徹底解説

その他:生活面での事前確認ポイント

退職に伴い、以下も確認しておくと安心です。

  • クレジットカード:個人事業は審査に影響する可能性あり
  • 住居:賃貸契約の更新時に収入証明を求められる場合あり

まとめ|フリーランス薬剤師が押さえるべき6つの要点

退職後制度まとめ|まとめ

本記事で解説した内容を、最後に6つの要点として整理しました。
退職前後の準備や手続きを進める際のチェックリストとしてご活用ください。

  1. 健康保険の選択 … 任意継続 or 国民健康保険(薬剤師国保含む)を比較して最適化
  2. 年金の切替 … 国民年金+付加年金で老後の受給額を底上げ
  3. 失業給付の検討 … 開業予定でも条件次第で受給チャンスあり
  4. 住民税の支払い準備 … 退職時期で変わる納付方法を事前把握
  5. 所得税の確定申告 … 税金の過不足を調整し、還付の可能性も
  6. 生活基盤の確認 … クレカや住まいの契約条件は退職前にチェック

退職から独立への流れは複雑ですが、正しい知識と準備があればスムーズに移行できます。本記事がフリーランス薬剤師としての第一歩に役立つことを願っています。

この記事で扱った内容以外にも、開業準備には押さえておきたいポイントがあります。

👉 開業準備について詳しく知りたい方は、フリーランス薬剤師の開業準備まとめ をご覧ください。