フリーランス薬剤師として独立を考えたとき、最初にぶつかる壁が案件の確保です。
「仕事はどこから得ればいいのか」「収入が途切れたらどうしよう」
私自身も、独立を意識し始めた頃はここが一番の不安でした。
マッチングサービスを使うのか、派遣を活用するのか、それとも自分で営業するのか。
情報はあっても、どれが現実的なのかを見極めるのは簡単ではありません。
そんななかで私が選んだのは、“同じ職場で、雇用から業務委託へ切り替える”という初案件のつくり方でした。
長く勤めた薬局で信頼関係があり、仕事内容も変わらない。
その土台があったからこそ、安全に独立の一歩を踏み出せたと感じています。
この記事では、この方法にたどり着いた経緯から、相談から契約成立までのプロセス、そこから見えてきた働き方の考え方までを、実体験ベースで整理しました。
読み終える頃には、
- 最初の案件づくりの現実的なイメージが掴める
- 自分の環境でも成り立ちそうかを考える材料が得られる
そんな内容になっています。
この方法を勧める記事ではなく、誰にでも当てはまるわけでもありません。
ただ、条件が揃えば、収入の土台を確保したまま独立できる現実的な選択肢だと感じています。
働き方を見直したい薬剤師の方の、参考例になれば幸いです。
最初の案件はこう作った|同じ職場で業務委託へ切り替えた理由

独立を意識し始めた頃、私は雇用のまま働き続けることに小さな違和感を抱えていました。
働き方や時間の使い方を、もう少し自分で選べるようにしたい。
そう考えるようになった背景は、フリーランス薬剤師を目指した理由で詳しく書いています。
とはいえ、まったく新しい環境でいきなり仕事を探すのは負担が大きいものです。
そこで選んだのが、今の職場で雇用から業務委託へ契約形態を切り替えるという方法でした。
信頼関係のある職場で、仕事の中身は大きく変わらない。
それでいて時間の使い方は調整しやすくなり、働き方の自由度は増える。
私にとっては負担が少なく、現実的に独立へ踏み出せる“半歩”でした。
何より大きかったのは、最初の仕事が決まった状態で独立できたことです。
営業をしなくても収入の土台があり、新しい環境に慣れるストレスもない。
その分、開業届・事業用口座・会計ソフトの設定といった初期の手続きに集中できました。
独立したての時期は、不安も多く、やることも多いものです。
収入の見通しが立っているだけで、気持ちにも時間にも余裕が生まれました。
雇用から業務委託へ|相談から契約成立までのプロセス(実体験)

ここからは、相談から契約が成立するまでの流れを、私の場合の一例として時系列で振り返ります。
会社からの“賞与削減”が転機になる
当時は、働き方や働く時間をもう少し柔軟にしたいと考えていた時期でした。
そんななかで、会社から業績不振を理由に賞与の削減を言い渡されます。
経営状況を踏まえた実務的な話で、感情的なやり取りがあったわけではありません。
ただ、収入も働き方も会社の判断ひとつで左右されるという事実を、あらためて意識させられました。
この出来事が、働き方を具体的に見直すきっかけになります。
双方にメリットがある形として業務委託を提案
独立の準備を進め、状況を整理したうえで、私から会社に「業務委託への切り替え」を提案しました。
- 会社側:必要な稼働だけ依頼でき、人件費を柔軟にできる
- 自分側:働き方の自由度が高まり、独立への移行がスムーズになる
「それなら辞めます」という一方的な流れではなく、お互いにとって最適な働き方として相談できたこと。
それが、話がスムーズに進んだ理由のひとつでした。
会社側が専門家に確認
提案のあと、会社側は顧問税理士など専門家と相談しながら、契約形態の変更について内部検討を進めました。
業務委託が成立するかどうかは、税務・労務・リスク管理など複数の観点からの判断が必要です。
これはどの会社でも必要な過程だと思います。
私の場合も、専門家の確認を経て進められたと聞いており、契約への安心感につながりました。
契約書を作成し、移行が決定
内部検討を経て、会社から「業務委託で進めましょう」と正式に返答があり、契約書の作成へ進みました。
薬剤師としての業務内容は大きく変わらないものの、業務の範囲や進め方は契約書で明確に区切る形です。
こうして、独立初期の不安を大きく和らげてくれる最初の案件ができました。
この働き方が成立した理由と、注意すべきポイント

同じ職場で雇用から業務委託へ切り替える方法は、条件が揃えば独立初期の負担を大きく減らせます。
振り返ると、成立の背景にはいくつかの条件が重なっていました。
あわせて、検討するときに気をつけたい点も整理しておきます。
この方法が成立した3つの理由
理由① 長年の信頼と即戦力性があった
長く同じ職場で働いていたため、現場の動線・患者さん対応・業務フローはすべて把握していました。
契約形態が変わっても、説明なしで現場に入れます。
外部の委託スタッフを受け入れるときは、本来なら教育や準備が必要です。
その手間がいらないことは、会社側にとってもメリットだったのだと思います。
理由② 会社側にもメリットがあった
当時の会社は、人件費の見直しや働き方の柔軟化が必要な時期でした。
業務委託なら、必要な時間だけ依頼でき、人件費の固定化も避けられます。
「辞められるより、形を変えてでも続けてもらえる方が助かる」
会社側にもそんな事情があったようです。
状況が重なっていたことも、話がスムーズに進んだ要因でした。
理由③ 独立準備による心理的余裕があった
生活防衛資金の確保、独立に必要な基礎知識の整理、退職後の手続きの把握。
こうした準備を事前に進めていたため、判断を急ぐ必要がありませんでした。
余裕を持って相談できたことで、会社側にも「急に辞めたいわけではない」と伝わったのだと思います。
この安心感も、契約成立につながった要因のひとつでした。
検討するときに知っておきたい3つの注意点
注意点① 偽装請負にならないための線引き
契約書の形式が業務委託でも、実態が雇用に近いと偽装請負と判断される可能性があります。
明確な指揮命令を受けていたり、勤務時間を細かく管理されていたりする状態です。
私の場合も、業務の内容や範囲を契約書に明記し、業務指示や勤務拘束にならないよう事前にすり合わせました。
双方がこの線引きを理解しておくことが、後々のトラブルを防ぐことにつながります。
注意点② 契約書は必ず作る
業務委託では、報酬・支払い条件・業務範囲などを契約書で明確にしておく必要があります。
私の場合は、まず自分で契約書のドラフトを作り、会社側(顧問税理士を含む)に確認してもらいました。
第三者のチェックが入ったことで、私自身も安心して契約できました。
具体的な作り方は、次の記事で紹介しています。
👉 マネーフォワードではじめる契約書のつくり方|テンプレ活用でもOK
注意点③ 税・社会保障の扱いが変わる
業務委託になると、税金や社会保険の扱いも大きく変わります。
所得税は自分で納税し、健康保険や年金も自分で切り替える必要があります。
また、雇用保険には加入できないため、失業手当のような備えはなくなります。
何をいつ手続きするかは、次の記事で一覧にしています。
👉 フリーランス移行の退職後手続き|社会保険・税金の手続きと進め方
独立して見えてきた“収入の複線化”という考え方

業務委託への切り替えで、収入の土台を保ったまま独立できました。
ただ、独立してあらためて感じたのは、収入源が一つであることは雇用時代と変わらない、ということです。
会社の判断ひとつで賞与が減る経験をしていたので、このことは実感としてよく分かっていました。
契約相手が変わっただけで、一つの収入に頼る構造はそのまま。
業務委託の契約も、いつまで続くかは分かりません。
だからこそ意識するようになったのが、収入を複線化するという考え方です。
柱が複数あれば、一本一本は太くなくても、全体として暮らしは安定します。
どれかが細くなっても、すぐに生活が揺らぐことはありません。
私の場合は、薬剤師の仕事を一本目の柱にしつつ、ブログを始めました。
実際にやってみると、自分で稼ぐ力を身につけるのはなかなか大変です。
それでも、雇用に頼らず稼ぐ手段を育てている感覚は、それだけで心の余裕につながっています。
こうした考え方を落ち着いて実践できているのは、家計管理と資産形成の土台があったからだと思います。
支出を把握し、ある程度の資産を備えていたからこそ、サラリーマンの安定を手放す決断ができました。
新しい柱も、収入を急がずじっくり育てられています。
収入の柱が増えていくと、その先には働き方や事業の形をさらに整えていく選択肢も見えてきます。
私自身、そうした見通しを持てるようになったことが、独立して得られた大きな変化のひとつでした。
まとめ|最初の案件は“今の職場”から生まれることもある

独立初期の最初の案件は、必ずしもゼロから探す必要はありません。
これまで積み重ねてきた経験や信頼関係がある職場なら、契約形態を変えるだけで新しい働き方が生まれることもあります。
今回紹介したのは、信頼・即戦力・職場のニーズが重なって、雇用から業務委託への移行が自然に成立した一例です。
偽装請負の線引きや契約書の作成など、押さえるべき点はあるものの、特別な営業力や人脈が必要だったわけではありません。
「独立は特別なことではなく、今ある信頼関係から始められる」
私自身、独立を経験して一番強く感じたのはこのことでした。
そして、独立はゴールではなく始まりです。
一つの収入に頼らず、柱を少しずつ増やしていく。
その視点を持てたことも、この働き方を選んで得られた変化でした。
大切なのは、「自分の職場環境ならどうか」「双方にメリットのある形として成り立つか」という視点で、いまの状況を冷静に見つめ直すことです。
あなたに合った、無理のない独立の形を探すヒントになれば幸いです。
✅ 次に進めるアクションはこちら:
👉 マネーフォワードではじめる契約書のつくり方|テンプレ活用でもOK
独立後に避けて通れない業務委託契約書を、テンプレートを使って作成する手順を解説しています。
今回の記事で触れた契約書の重要性を、実務レベルで進めたい方に向いています。
独立を支えるお金の土台づくりは、こちらもどうぞ。
👉 フリーランス薬剤師のお金との向き合い方|黒字家計と投資が独立の土台
家計管理と資産形成が独立の土台になるという考え方を、実体験をもとに整理した記事です。
